世間の若い人らはほら、エネルギーが有り余ってて、愚かですから。擦ってるでしょう。色々。ほら愚かな若人は擦ってんでしょ? 毎日毎日飽きせずによお。下敷きとかそういうの擦ってよ。髪の毛を逆立てて遊んでんだろ? 俺は大人なのでそういう事はしない。大人は下敷きを擦らない。しかし別の物を擦った。何を。車を擦った。だって愚かな大人だから…。
車で買い物に行くじゃない。買い物が終わって駐車場から出るじゃない。左折で出たくて道路の車が途切れるの待ってたのよ。したっけおめえ、一台の車が止まって、待ってくれたのよ。礼をして出ようとするじゃない。したっけおめえ、反対車線からの車も右折で駐車場に入ろうとしてくんのよ。だから膨らんで当たらないように? でも待ってくれてんだから早く出ないと? 右に気を付けて? そしたら左から「ガリッ」て? あ?
図に記すとこう! フェンス! ファック! どうすんだこれ。狭い道だからここで止まると大迷惑だし。取り敢えず前に動く。そして考える。こういう時どうすんだっけ? どうすれば良い? 取り敢えず声出すわ。「ンモー!」。「俺に譲ってんじゃねえぞボケカス!」。理不尽。完全に八つ当たり。恩を仇で返す大人。外に聞こえないように言っているので許して頂きたい。そして理不尽を吐き出す事により冷静になる効能。まずはグルって回って店戻ろ。しかし千葉のクソ道(発音は奥の細道)。Uターンするスペースが無い。回り道して戻るしか無い。どうにかグルッ。その間数分。戻るのに結構時間掛かった。これもしかして、逃げたと思われてるんじゃ。現場に店の人と警察が待ち構えていて。どうすんだ。逮捕か。終わった。
戻った。誰も居なかった。それでは駐車場に停めて、降車し、外側から車を見る。なんつっても「ガリッ」ってのは音だけで、案外、実はなんともなかったとか無いですかね? チラッ。なるほどね。 普通に傷ついてるわ。普通というか結構。ホゲー。そしてお店のフェンス(金網)を見る。あ、なんか、フェンスつよい。フェンスが車に勝ってね? でも流石に少し損傷してる気がする。お店に突入して店員さんに告げる。あの…すびばせん…外のフェンスに車を…。すると店員さんに面倒な事しやがって、という目で見られる。いや実際に面倒な事である。すびばせん…。
店長さんが来て確認する。特に怒られなかった。逆に心配されたり気を使われる。これが上に立つ人の徳か? このフェンスは何度もぶつけられているらしい。徳から来る優しい嘘か? ただしっかり免許証の写真は撮られる。ごもっともでございます。
次に警察に連絡する。警察。警察っておめえ。いわゆるポリスじゃねえか。大丈夫なのか。俺は何故か生まれつき警察を恐れている。身に覚えは無いが何かやっちゃってる気が常にする。これ下手したらベッケンタイホ(皇帝?)とかねえか。というか110番に電話すんの初めてな気がする。ドキドキする。しかし110番に通話アプリからは電話できなかった。アプリからじゃなくて通常の電話で掛けろって。電話代が高いプランなのに…。これ電話代掛かるのか…。金…。この局面で電話代の心配をしてしまうアタシ。しかし緊急通報は電話代が掛からなかった。よく考えれば当たり前である。プルル。ガチャ。「事件ですか。事故ですか」。あ、これ本当にそう言うんだ。いえ、事故です…。自損です。すびばせん…。
色々聞かれる。現場の住所も聞かれる。分かんない。何かのライフハックで緊急通報時に住所を知る術があった気がするがいざとなると全く思い出せない。しかし店の名前を伝えたら通じた。そして警察様の到着を待つ。10分ほど。結構な傷の入った車の隣にボーッと立つ。晒し者。海外にそういう刑罰があった気がする。しかし実際に私が悪いのです…。
警察様の到着。説明する。車を見せる。「あ、結構ガッツリいっちゃってますね」。そっすね…。あとはメジャーで傷の位置測ったり、車検証と自賠責の書類見せたりしてあっさり終わった。
次に保険会社に連絡。事故受付センターに電話する。プルル。ガチャ。「事故の場合は1を押し」1。「しばらくお待ち下さい」。これもしかして待たされるやつか。こういう電話によくある「お待ちください」を数十分やられたらメンタル削れるわ。ガチャ。すぐ繋がった。保険会社さすがだね。「どうされましたか?」。事故です…怪我はないです…私がゴミです…。氏名、はい。生年月日、はい。車種、はい。ナンバー、はい。たくさん聞かれる。そして色を聞かれた。色? 色って何だ。俺の色って。差別の話か。それともブルベとかイエベとかそういう? はい。骨格ストレートでMBTIはISBNです…。すいません。知ったかぶって適当言いました…。それ系は何も分からないです…。というのは脳内の話であり、実際は数秒の空白。刃牙に出てくる外国人のような口調で「…イ…ロ…?」と尋ねるのが精一杯であった。「免許証の色です」。ああ。そういう。そういやその前に免許証の情報聞かれてたわ。その流れでね。はい。僕ゴールド。
そして金の話をされる。免許証の色ではなく、実際の金の話だ。リアルゴールドだ。そして当然金は減るのです。保険に入っていようが等級は減り、それなりにオデのお金も減ります。でもほら、人様を傷付けるような事故じゃなくて良かったんです…。そうなんです…。
ようやっと家に帰り、なぜ遅くなったのかを聞かれる。おう、そらアレじゃ。車を擦ったんじゃ。おっとウェイト。まあ聞けよほら。まあそらあ擦ったよほら。でもパニックになったりせんわけよ。冷静に素早く事故処理して? 警察とか保険とか。全てを完璧に対処したんじゃ。いやあ大変大変。と、まるで武勇伝のように捲し立てて語りケムに巻く内弁慶。して弁慶よ、巻けたか? いいえ巻くこと能わず。内弁慶の立ち往生。はい。はい。皆様には大変ご迷惑を…。はい。オデはカスです…。